「そう手引書に書いてある」
「マニュアル!?」
柚月が驚愕の事実に目を瞠る、その向こうで。
「ぶっ」
少年のくぐもった声が聞こえてくる。
廊下の先で、タイミングよく派手に転倒する姿が見えた。
柚月は急いで駆け寄る。
「大丈夫? 宗真(そうま)」
腕にを引っ張り、無事を確かめる。
「は、はい……」
鼻を押さえ、涙目で返事するのは紅顔の美少年だった。
歳は、十五、六ほど。
白の狩衣や薄い青色の指貫などを見るかぎり、怪我はなそうだ。
「いらっしゃいませ。柚月さま」
少年は困ったように笑い、挨拶してきた。
仔犬のような愛らしさと素直さを感じる。
このまま成長すれば、将来はさぞいい男に変身するだろう。
だが、柚月は眉根を寄せるだけだ。
「宗真、何度も言ってるでしょ。私のことは名前でいいってば」
「とんでもない。ぼくみたいな未熟な術者、柚月さまと話すことさえおそれ多いです」
目を見開いて首を振る態度は、率直な尊敬の念を感じる。

