「指にまで吸いついてきて……この節操なしめ。一体、誰に習ったんだ? 次は噛みつくのか?」
何が楽しいのか、東雲はねちねちとからかってくる。
恥ずかしくて悔しくて。
柚月の頬は熱くて、どうにかなりそうだった。
(こんなこと、誰にもしたことないってばッ!)
早々、何度もあってたまるか。
頭ではそう反論するも、声が出てこない。丸くなっていた白夜が何事かと柚月を見つめてくる。こんな状況をあしらえるほどの人生経験はない。
唇を噛みしめ、じっと恥辱に耐えるしかなかった。
そこへ、後方からガッと不思議な音が響いてくる。
「あぅッ!!」
一拍あとには、謎の悲鳴。
驚いて振り返ると、爪先を押さえた宗真が蹲っている。床板で足先をこすったのだろうか。
金魚鉢の器を乱雑に床に置いた柚月は慌てて駆け寄る。気が動転していたので、膝に白狐がいたことを忘れていた。立ち上がった瞬間に、ころんと転がり落ちる。
「宗真! 大丈夫!?」
「ゆ、柚月さま……あの、その……えと」
混乱しているのか、言葉が出てこない。
そんなに何を動揺しているのか不思議だった。
転ぶのは毎度のことだろうに。
とにかく、彼の足を引っ張って傷の有無を確かめる。
「よかった……爪とかは割れてないみたい」
ほっとしたのも束の間。
目が合った宗真はひたすら狼狽し、顔を茹で蛸のように真っ赤にしている。
とどめには、一輪の花を差し出して俯く。その手は、見事にぶるぶると震えていた。
「ぼく、何も見てません。何も見てませんから……ッ!」
しどろもどろに言い訳され、頭を殴られたような衝撃を受ける。
(み、見られてた……ッ!?)
柚月は、あまりの恥ずかしさで死にたくなった。
側に駆け寄る白夜は抗議するかのように、キーッと高い声で鳴いた。

