「君は猫か。僕は、後ろの手巾をとってくれと言ったんだが」
「ッ!?」
呆れた声音の東雲が指で背後をさす。
後ろを振り向けば、几帳の側にある火桶の上に白い布が置かれていた。
視線を固定したまま、柚月は愕然する。これでは完璧な早とちりではないか。
よくよく思い返してみると主語は聞いてないし、東雲からも「舐めとれ」とは要求されていない。彼は本当に手巾をとれと指示していたのだ。
何で、こんな勘違いをした自分がわからない。
(……でも、あれ?)
目にとまった白絹の端には、刺繍が施されてある。緋色の桜模様だった。
(どこかで見たような……)
記憶を手繰る寸前、東雲の声で現実に引き戻された。
「意外に侮れないな。山猫娘」
その言葉で嫌な予感がした。
視線を戻すと、東雲の表情はとても愉悦じみた、いやらしい笑みをしている。
「似た状況の度に、そうやって誰かれ構わずくわえるのか?」
「な……ッ!?」
さらり吐かれた台詞に、柚月は絶句する。
言葉の意味は理解できなかったが、卑猥なニュアンスで責められていることは察する。
東雲の外見も手伝い、とんでもなく恥ずかしいことをした気になってくる。初心な少女が勝てるはずもなかった。

