「……じゃあ、当分の予定は石の調査ついでに、ご当主さまの警護をするってこと?」
「あいつを警護する術者は掃いて捨てるほどいるから、本来なら君のする仕事じゃない。けど、彼らだけの警護では不十分だと判断した時、不審人物の捕縛という方針で力を貸してもらう」
何だか、妙に気の進まない仕事らしい。
スプーンをくわえたまま、柚月はぼんやりと考える。
この郷の政治を担う当主が狙われているなら一大事だろうに。
自分の世界でいえば、天皇か総理大臣あたりか。決して、東雲のように『ぶっちゃけ面倒くさい』なんて態度にはならないはず。
(ん? 元の世界?)
そこで、ある疑問を思い出した。
「漣」
柚月が名前を呼ぶと、視線だけを上げてくる。
「あのさ……」
「なに」
はっきりしない物言いに、東雲が訊ねてくる。
急かしているつもりはないと知っているので、柚月も慎重に言葉を選び出した。
「私の力って……元の世界でも出るものなの?」
問われた東雲は、無言で片方の眉を器用につり上げた。
「心当たりでもあるのか?」
「んー……」
あるにはあるが、どう話せばいいのやら。
昨日の不良たちの一件を初めから説明するのは骨が折れる。コンクリートの柱にひびを入れたことだけ告げても、「前後の流れがわからない」とか言われる可能性だってある。
柚月が素早く要点をまとめようとするより先に、東雲が答えてしまう。