放課後の教室。
 ぼんやりとした表情で、柚月は考える。



(……どういう意味だったのかな、アレ)



 T字ホウキで教室のゴミを掃き出す。
 ほぼ単純作業のような動きだった。

 周囲の生徒も机を動かしたり、黒板の掃除をしている。



 あのあと、柚月はすぐ元の世界へ帰された。

 正確には、幻術が消えた頃に宗真が迎えに来てくれたのだ。
 帰り際に顔を合わせた東雲には、特に変わった様子はなかったが。


 だからこそ、柚月は悩んでいる。


(……どう解釈すればいいわけ?)


 直接、本人に訊くしか晴らせない謎だ。

 しかし、その根本的な問題は東雲云々ではなく、自分にあると柚月は薄々感じはじめている。

 今まで、積もりに積もった彼に対する不満と不信、怒りなどがたくさんあった。
 それなのに、あのたったひとつの幻術で全てが霧散してしまう。



(……私、単純すぎないか?)


 眉間に深く皺を寄せる。

 散々こき使われた過去を、こんな形で精算するのか。

 東雲に、さらに「扱いやすい女」だと思われてないか。