最近の人々は、魔法術発達化に夢中で、自然環境を完璧に無視している、と、魔法史の授業で先生が言っていた。
だから、俺の寮付近に植えてある木とか、魔法学校近くの山も川も、ほぼ全てが人工の物だった。
でも、ナギは違う。
その辺に生えている木、透けるように透明で綺麗な小川、この大地を埋め尽くす黄緑色の背丈の低い草、目の前に聳え立つ高い山に生える、一本一本の木も………。
全てが、緑豊かな、ありのままの自然で出来ている。
そのお陰なのか、ここで吸う空気はすげぇ旨い。
世界で一番大好きで、世界一旨いと思う空気を、俺は思わず、目を閉じて大きく吸い込んだ。
夏なのに、かなり涼しげな風が吹いて、静かに俺の髪を揺らした。
…えっ、何で瞬間移動じゃなくて、わざわざホウキで来たのかって?
…あのな、瞬間移動出来る距離には限度って物があるんだよ。
年齢によって、瞬間移動出来る距離は違うが、俺の年齢だと、その場所から周辺に集まる市外までしか移動が出来ない。
だから、ホウキで行くしか無い。


