突然、先生は私の腕を振りほどくと、バッと振り返り私の肩を痛いくらいにつかんだ。
そして、私の口を塞ぐように、私にキスをした。
乱暴で、優しいキス。
まるで永遠のような一瞬だった。
先生は一度離れると、もう一度、ゆっくりとキスをした。
そしてまた離れると、壊れものを扱うかのようにそっと私を抱きしめる。
「…お前は、本当につかめない奴だ」
どこか戸惑いを含んだ声で、先生は呟く。
「本気なようで、突き放せばあっさり引いたり、近づいたと思えば、離れ、また近づいてくる。常に明るくさっぱりしているようで、どこか影を持っている。しかしそれは他人には見せないし、みせたくないとも思っている。だが同時に気づいて欲しいとも思っているのだろう?」
私はパッと顔を上げる。
先生の黒い瞳がじっと私を見据える。
誰も気づかない、気づいて欲しくない、でも気づいてほしい。
矛盾した私の心、私のことを先生が理解していたことに驚く。
先生はふっと表情を和らげると、私の目に浮かぶ雫を拭い去る。
「自分は泣かないと言っていたが、お前本当は泣き虫だろう?弱い自分を誰にも見せず、強くあろうとする。実際、お前は強い人間だと思う。強いのに、弱い。明るく元気なのに、影がある。矛盾を抱えて、つかみにくい」
真剣な表情で先生は続ける。
「そしてお前は、目標に向かって、一途に真っ直ぐに進んでいく。後ろを振り返らない。…そんなお前に、俺はいつしか惹かれていたんだ」

