好きになんか、なってやらない

 
「ちょっ……」


ぐらりと揺らいだ体。

気づくと、私の体は、岬さんの腕の中へと閉じ込められていて……。


「な、にするんですかっ……」

「やべー……。超可愛い」

「っ……」


ありえない言葉に
思わずドキンと胸が高鳴った。


今までだって、散々そんな言葉を言われたはずだった。

だけど油断した隙に抱きしめられ
耳元で囁かれた甘いセリフ。


こんなことで靡かない。
こんなことで揺らがない。


「は、なしてくださいっ……」


どこかで流されてしまいそうな自分を振り切り
力強く抱きしめてくる岬さんの体をドンと押した。



「あ、わり……」

「調子に乗りすぎ。お疲れ様でした」



目も合わすのも気が引けて
俯いたまま、すぐ後ろのタクシー乗り場へと駆けて行った。