好きになんか、なってやらない

 
オフィスビルを出て、無言のまま駅へと向かった。

電車は動いていないけど、タクシーを捕まえるのには駅が一番。


なんとなく気まずい空気。
そりゃそうだ。
自分のことをあれほど好きだと言ってくる人を、こっぴどく振っているんだから。


……やっぱり少し言い過ぎたな……。


「……すみません」
「え?」


さっきの自分の言葉を思い出して、沸々と湧きあがる罪悪感に負け、足をとめて謝った。


「言いすぎました。さっき……」
「さっき?ああ……でも別に、玲奈が謝ることじゃないだろ」
「いえ。だって私がトラウマをもっているのは、岬さんには関係のないことですから……」


もしも過去のトラウマがなければ、岬さんの気持ちも素直に受け入れられたかもしれない。

彼に騙されてるわけでもないのに
グイグイと自分に来るせいで、勝手に過去の人を重ね合わせ、騙されていると思い込んでしまっている。


「分かってます……。
 岬さんと、私をからかった男は違うってことは……」


岬さんが、こんなにも自分に執着する理由なんて分からない。

だけど、何度も何度も、私に冷たくあしらわれたって彼はめげずにやってきて……



「少しだけ……
 信じて、ますよ……」



心の奥底に生まれている
ほんの少しの信頼の気持ちを、彼へとぶつけた。