「だから岬さんのことも信用できません。
岬さんみたいに、女の人にモテる人が、こんな私に執着する理由が見当たらないから。
どうして私なんですか?
私、岬さんに好きになってもらえるようなこと、何かしましたか?」
突然、つきまとうようになった岬さん。
入社当初から、彼はすでに社内で一目置かれている先輩で、女性社員みんなの憧れの的だった。
当時は女の人にもいい加減で、とっかえひっかえ別の人を連れ歩いている。
噂から聞くと、可愛い子にはとりあえず手を出すという最低ぶり。
そんな私にも、たまに声をかけられることがあったけど、
その噂のせいで最初から私は、岬さんが苦手だった。
だからいつも冷たい態度をとっていたし、必要以上に近づかないようにしていたはずだった。
なのに……
「………俺は…」
「おーい。まだ残ってるのか。
そろそろビルのエントランスも閉めるぞ」
岬さんが口を開きかけた瞬間、フロアに響いた声。
振り返ると、ビルの管理をする警備員さんが覗き込んでいた。
「あ、はい。もう出ます」
気づけば時間も1時をまわっている。
いくら電車がないとはいえ、いつまでもここにいるわけにもいかない。
私たちはすぐにオフィスビルから出た。

