好きになんか、なってやらない

　
「めずらしいな。いつも強気な玲奈ちゃんが、そんな不安になるなんて」
「べつに……不安になんかなってないし」


それでも「不安」と甘えられない自分は、本当に可愛くない。

凌太は苦笑して、私の頭をポンと叩いた。


「俺のこと、信じらんない？」
「……過去の行いを思い返せば」
「おいっ、それを持ってくんなよ」
「嘘だよ。………信じてる」
「ん」


不安になって聞いてくる凌太を見たら、なんだか自分が情けなくなってきた。


何に対しても物怖じしない。
さっきまで、美空さんを目の当たりにして笑っていたじゃないか。


凌太と美空さんは過去の関係。
私と陽平が過去であったように……。


「そんなに不安なら、今日は俺んち泊まる？」
「……いい。明日仕事だし」
「あ、そ」


傍にいたい。
離れたくない。

そう思っているのに、素直になれない自分。

少しでも、甘えられるような女の子であったら……


「やっぱ連れて帰る」
「え？」
「んな顔してるお前、一人で帰せるか」
「……うん」


だけど彼は、いつも一歩先を行く。

私はそんな凌太に、いつも甘えてしまうんだ。