好きになんか、なってやらない

 
あまりにも突然の出来事すぎて
目の前の光景をただぼーっと眺めていることしか出来なかった。


私の目の前にいるのは自分の彼氏で
その彼氏に抱き着いているのは、トップモデルの美空ちゃん。

彼女を目の前にして
「美空ちゃん」というよりは「美空さん」と言ったほうがふさわしい。

そんなどうでもいいことを考えてしまっていた。


「凌太、ずっと探してたんだよ。
 押尾さんから凌太の話を聞いた時はどんなに嬉しかったか……」


今もなお、首に腕を回しながら至近距離で凌太を見上げている美空さん。

だんだんと、彼女としての不安と焦燥感にかられてくる。


「あたしね、本当はずっと……」

「ごめん、離れて」


美空さんが何かを言いかけたとき、それを押しのけるように彼女の体を離す凌太。

誰もがドキッとするような甘えた瞳をもつ彼女とは反対に
凌太の目はひどく冷めているように見えた。



「彼女いるから」



一言、淡白に応えた。
そして私の隣に並ぶ。

美空さんは私の顔をちらっと見て、一瞬にして冷めた顔つきになった。


「ああ……雑誌の子ね」


人がガラリと変わる瞬間。
今、それを目の当たりにした。