好きになんか、なってやらない

 
「そ、ういう意味で言ったわけじゃ……」
「じゃあ、そんなこと言わないで」


なぜだか責められて、言葉をつぐんだ。


凌太、怒ってる?
私が他の女の子に興味持ってるように言ったから?

でもなんか、それだけが理由じゃないような気が……。


「よし。これがいいな」


だけど、パッと一つのアイシャドーを手に取った凌太は、もういつも通りだった。


「ゴールド?派手じゃない?」
「んなことないから。ベージュ、ブラウン、ゴールドの三色になってるだろ。
 これをグラデーションにすれば全然派手じゃなくなるの。
 会社でゴールドが気が引けるんなら、ベージュとブラウンだけ使えばいいし」
「え、私、会社にも化粧してかないとダメなの?」
「マナー。普通、いい年した大人が、ノーメイクで会社に来ねぇからな」
「う……はい…」


確かにそれは、なんとなく気づいてた。

社会人になってからのメイクは、半分はマナーであること。
派手すぎないナチュラルメイクをして出社するのは、常識範囲であると……。

けど、今までめんどくさくて、ずっとやってこなかった。


「あとでメイクの仕方も教えてやるから」
「お願いします」


そのあと、凌太はファンデやチーク、マスカラなど、化粧品一式を手に取るとあっという間に会計を済ませてしまった。