好きになんか、なってやらない

 
CMのキャッチコピーの
【彼を虜にするルージュ。この唇をあなただけに……】
と書かれた口紅のポスター。

その隣には、違った表情をする美空ちゃんのポスターがもう一枚あって、
【輝く目元。あなたと目を合わせたいから……】
と書かれたアイシャドーのポスターが並んでいた。


どうやらこのメーカーは、美空ちゃんを専属に取り扱っているらしい。


「そうだなー……。玲奈ならやっぱこのあたりの色かな……」


凌太は、そんな美空ちゃんのポスターには一切目もくれず、私の化粧品を選んでくれている。

普通なら、女子と男子が反対の立ち位置。
まるで分からない私は、完全に凌太に任せている。


「ねー」
「ん?」
「やっぱさ。凌太も美空ちゃんみたいな子、可愛いって思うの?」


なんとなく、日常会話レベルで聞いた質問だった。

手持無沙汰になったから、目の前のネタを振る。
そんな程度だった。


「……べつに。興味ない」
「興味ないって珍しいね。可愛い子なら、すぐに食いつくと思ってたのに」
「……」


たまたま、タイプじゃなかったのだろうか……。
美空ちゃんはいわゆる可愛い系のモデル。
凌太の好きなタイプは、綺麗系とか?



「何?玲奈以外に興味持っていいの?」



ふと振り返った凌太の顔は、意外にも不機嫌だった。