「もし、その時何かあったとしたら……俺、あの男のこと、殺しちゃうかも……」
「それは……ダメですよ」
殺すなんて、そんなのダメ。
ただの言い回しだってのは分かってるけど。
「頼むから、もう俺の前以外で酒飲まないで」
顔を上げ、心の底から懇願しているような顔。
初めて見る、苦しそうにゆがんだ顔。
胸の奥が、ツキンと痛くなった。
どうして、あの日陽平と二人で飲みに行ってしまったんだろう……。
どうして、大丈夫だって甘く見て、お酒を飲んでしまったんだろう……。
その結果が、今目の前の人をこんなにも苦しませてしまうことになるなんて……。
「……ごめん…なさい……」
いつもなら、喧嘩腰に否定する言葉も
触れてくる手をはねのけようとする力も
今の私には一切必要なかった。
だって心は、今素直になることを望んでいるから……
「玲奈。これからは俺の手の届くとこにいて」
「………は―――」
返事をすることは出来なかった。
その唇は、岬さんのものと重なっていたから……。

