それぞれの席に着くころには、業務開始の時間になっていて、静かになったフロア。
ふと顔をあげると、岬さんはすでに仕事モードの顔になっている。
意外だ……。
あんなふうに、上司にたてつくような意見を言うのは……。
だけど課長の、ああいったすぐに人に仕事を押し付けることには、いい加減周りの人も嫌気がさしていたので、誰一人文句を言うこともなくて……
「すごいね。凌太さん」
「え?あ、うん……」
ひそひそと、真央に耳打ちされて、さすがにその言葉には頷いた。
悔しいけど、仕事ができるのは事実で
認めたくないけど、カッコいいのも事実。
だけどどうしても、彼へとなびきたくないのは……
(……だろ?超簡単だったし)
「……」
過去のトラウマが、自分を引きずるから……。
男の人を信用できない。
信用することができるとするなら……
女にモテない
冴えない人のみ。