「何す……」
「はい。これ」
「え?」
突然、焦点が合わないほどの距離に差し出された物体。
人間の本能的に、咄嗟に手が出て、その黒い物体を手に取ってしまった。
「なんですか、これ……」
手に取った物体を、焦点が合う距離まで離し、じっと見つめる。
どうやらそれは、黒猫のぬいぐるみのようだ。
「豚?」
「猫でしょ!」
「分かってんなら聞くなよ」
そういう意味じゃないよ!
心の中で即突っ込んだけど、それすらも疲れる。
「玲奈に似てねぇ?
家の近くのゲーセンにあって、思わず取っちまった」
「え……」
それを言われて、再びその黒猫を見る。
三白眼になって、じっと睨んでいるような目をしている黒猫。
可愛らしいというよりは、憎たらしい……。
「確かにー!玲奈っぽい」
「でしょ?他にも、白とかミケとかあったんだけど、絶対に黒!って思って」
「……」
勝手に人のイメージで盛り上がる二人。
ねえ、これって喜んでいいところ?