オヤスミナサイ~愛と死を見つめて~

こんなの、恋人同士だって云わないよね。
 
いつか、自然消滅してしまう前に、ちゃんと区切りをつけたかった。
 
私は、渡海さんと、恋愛を始めるために、想太とはきっちり別れておきたかった。
 
お互いがお互いを必要としていないんだもの。
 
想太、私が“別れよう”って云っても、傷つかないよね。きっと。
 
それも淋しい気もするけれど。
 
元々、お友だちから始まった、私と想太の関係。
 
また、いいお友だちに戻ればいいよね。
 
玄関のドアの向こうの、彼に向かって、こころの中でひとりごちた。
 
ジャージ姿に着替えた想太がやがて出てきて、

「そこの、公園にでも行くか」

と、言った。
 
想太のアパートの前には、小さな公園があった。
 
鉄棒と、ジャングルジムと、ブランコだけの遊具で、ちょっと狭い公園。
 
夕方になるといつも、子どもたちの声で溢れかえる。
 
それを、想太とベッドの中で、何回も耳にしていたことを思い出す。