オヤスミナサイ~愛と死を見つめて~

料理が運ばれてきた。火の通っていないものは、出てくるのが早い。

「ビールを」
 
見れば、涼くんのジョッキはもう空になっていた。
 
私も3分の1ほど残っていたビールを飲み干す。

「私も、ビールください」
 
涼くんって、飲むピッチが早い。私もそうだけれど、結構お互い酒豪なのかもしれない。
 
彼は、運ばれてきたもろきゅうとたこわさを、私と彼の丁度真ん中に置いた。
 
ふたりで、食べられるようにしてくれたのかもしれない。
 
いくらマイペースだからと云って、注文した料理をひとりで食べるなんてことはしないようだ。
 
私たちは終始無言だった。
 
話すことがないというわけではない。
 
涼くんのこと、知らなすぎるから、聞いてみたいこともあった。
 
薬科大って、どんなことを勉強しているの? 学費って高いんでしょう? 将来は薬剤師になるの? サークルとか入ってるの?
 
聞けば応えてくれるだろうけれども、私は口を開かなかった。