オヤスミナサイ~愛と死を見つめて~

夢くんなら、ちゃんと私の歩調に合わせてくれるのに。
 
涼くんは、背が高くて足が長い分、歩くのが早いのだろう。
 
別に、肩を並べて歩きたいとか、そんなんじゃないけれど。
 
必死に追いついていかないと、見失いそうで。
 
ほんと、寡黙で不思議なひと。
 
何で私なんか、誘われたんだろう。
 
彼氏がいるって云っても、別に怯まなかったし。
 
一体全体、何を考えているのだろう、このひとは。
 
そんなことを思いながら、ふと涼くんはあるお店の前で立ち止まった。
 
親父たちが集う、焼き鳥屋だった。
 
涼くんは、私をちらり、と見、また何も云わずに暖簾をくぐって入ってしまった。
 
私も後に続く。
 
女の子相手だから、お洒落なお店……とかそういう思考はこのひとにはないらしい。
 
ま、私も別に飲み食いできればどこでもいいのだけれど。

「らっしゃーい」
 
威勢のいい店員さんの声に出迎えられる。