オヤスミナサイ~愛と死を見つめて~

夢くんは、ジーンズのポッケから何やら光るものを出し、私に手渡した。

「合鍵」

「ああ、ありがとう」

ちょっと嬉しさがこみ上げてきた。

私は鞄の中から、キーホルダーを取り出して鍵をつけようとした。

……ところ。

実家の鍵が目に入って、ああ、もうこの鍵を使うことも、しばらくはなくなるんだなと思うと、

一気に涙が溢れ出した。

「どうしたの? 梨聖ちゃん」

「……なんでもない、嬉しいの」

「そうか。それならよかった」

私は嘘をついた。

両親に、姉兄に、皆温かかった。

優しい家庭で育った。

今頃になって、家族のありがたみを感じた。そして初めて、離れるなんて、悲しいと感じた。

私はちょっと泣いて、そして夢くんとあたらしく暮らしていくことを胸に抱き、幸せになるからね、とこころの中で呟いた。