オヤスミナサイ~愛と死を見つめて~

私は夢くんの車の助手席に乗った。

続いて夢くんも乗ってきて、車をスタートさせる準備をした。

「忘れ物はない?」

「ないよ」

「じゃあ、車出すよ」

エンジンがかかる。

夢くんが、サイドブレーキを倒す。そして、車をスタートさせた。

私は門の前で立っている両親とお姉ちゃんの方は振り向かずに、手だけを窓から出して振った。

曲がり角に差し掛かる。

完全に、皆の姿は見えなくなった。

二度と会えないわけではないのだから。

私は泣きそうになるのを、堪えた。

車はしばらく走ったまま、赤信号に差し掛かった。

「あ、梨聖ちゃん、渡すものがあった」

「なに?」