オヤスミナサイ~愛と死を見つめて~

いつもの声のトーンに戻る鈴。
 
男のひとの前では、こうも変わるものかと感心させられる。
 
あの語尾の伸びっぷり、猫なで声。私には到底真似できない。
 
そうやって、今までも幾人もの男のひとを落としてきたんだろうな。
 
鈴、外見も可愛らしいし。化粧もうまいし。

「ね、梨聖。別れる気はないの? ――ないか。全部好きとか、ああまで言われちゃったら骨抜きだよね。梨聖は幸せ者だな」

「幸せよ。お陰さまで」

「いいな~。私もああいう、落ち着いた大人のお兄さんとつきあってみたい」

「探せばいくらでもいるでしょ」

「なかなかいないよ。あ、今度合コンしない? 智哉の伝で、なんとか人数そろえてもらおう」
 
鈴はスマホを取り出し、何やらメールを打ち出した。

「なに、トモヤくんの伝で、他の男のひとを狩るっていうの?」

「狩るだなんて、人聞き悪いな。いいひとがいればいいな~って」

「ダメな女」