そして

昼休み



お弁当を持って生徒会へ行こうと

バッグを開ける


さすがに食事中は

変なことしてこないだろう、と思って



でも、

災難は度重なるもので…





「あれ?」



お弁当がない?


まさか忘れた?



時計を見てみると

昼休み開始から早5分ちょい


購買のパンはもう売り切れてる時間だ



しょうがない

自販機のジュースで我慢しよう



そして、お弁当がないってことは

同時に、               
彼から逃げる口実がなくなったということ


なるべくゆーっくり歩く


それでも
予鈴まで30分を残して

生徒会へ着く



ドアを開けると

そこには彼がいて

お弁当を食べていた



「おせーよ!」




いつもよりちょっと距離をとって座る




「メシもう食ったの?」


「ううん」

首を振る私

「お弁当忘れた」



なんだか気をそらしたくて

窓の外を見てると…





「口開けて」


彼の箸には玉子焼き

まさか…?


「ほら、早く!」


言われるがままに

口を開けてしまう私


「ハイ、あーん!」


次の瞬間
口の中は玉子焼きの甘い味で満たされる


ニコッと笑う彼がまぶしい


「うまいだろ?」


「うん…」


突然のことに

全身が脈打つのを感じながらも

ゆっくりと玉子焼きを味わう



「会長のお母さんの玉子焼きおいしいね」


気持ちを落ち着かせたくて出たのは
そんな言葉だった


「いや、それ俺が作ったやつ」


「え、そうなの?
お弁当、会長が作ってるの?」


「うん」


なんだかオオカミの優しさと
家庭的な一面を見てしまった…


(ドキンッ!)



ん?

ドキンッ?



それは、認めたくないような思いが
私のなかで芽生え始めていた音だった