「バイパスができるんだってさ」

市街地から市外に抜ける大きなバイパスができるという話は、随分前からあった。


「へぇー…とうとう本決まりになったんだ…」

寝起きということもあって、まだ頭がぼんやりしてた。


「それで…話によると、どうやらあのクスノキも切られるらしい」

髪をかき上げていた手が止まった。


「うそ…」

頭の中に、忘れたくても忘れられない人の面影が浮かんだ。


「ホント。それで今、皆に聞いて回ってるんだ。あれを掘り返すかどうか。真由はどうしたい?」

シンヤの問いに対する答えは決まってる。
あの日、朔と約束したもの…。


「掘り出そう…。私、朔に会いたいっ‼︎ 」


胸の中に、三年前の約束が、思い出されていたーーー