「あっちーな…」

掘り出してまだ五分くらいしか経っていなかったのに、
早くもハルは音を上げた。


「情けないわね、貸して!私が掘る!」

ショベルに足を乗せ、体重をかけながら土を返す夏芽に、皆の歓声が上がる。


「おーっ!さすが吹部一の怪力女!」

シンヤの言葉に、夏芽がふざけて土をかけた。


「言葉を選べよシンヤ。ナツに埋められるぞ!」

可笑しそうに笑う朔の顔を、私は膝を抱えた格好で眺めてた。



ハル……友田春生(ともだ はるお)

ナツ……吉川夏芽(きっかわ なつめ)

シンヤ……角野晋也(かどの しんや)

朔……遠藤雄朔(えんどう ゆうさく)

そして私、真由……小沢真由子(おざわ まゆこ)


私達は五人は同じ中学の同級生。吹奏楽部(=吹部)の仲間だった。

ハルはトロンボーン、ナツはパーカッション、シンヤはホルンで、朔がトランペット、私はフルート…と、五人それぞれ楽器のパートは違ってたけれど仲良しだった。

中三の夏、県のコンクールで念願の金賞受賞を果たした私達はその思い出と一緒に、それぞれが持ち寄った物をタイムカプセルとしてこの楠の下に埋めた。


「十年後、皆が二十五歳になったら掘り出そう」

そう約束していたのが、わずか五年で掘り出さなくてはいけなくなった理由は、今朝の電話でシンヤが説明してくれた。