「よぉ真由!早かったな!」

原付バイクの後ろにショベルを積んできたハルが言った。

「私の家がこの木に一番近い所にあるからだよ」

楠を見上げる。
枝葉の隙間からこぼれる光。
その眩しさは、五年前と何一つ変わってない。

リンリンリン…♪

丘のふもとから聞こえるチャリのベル音。
爪先立ちして見下ろす道の端から、上って来る仲間達。


「まーゆー‼︎ ハールー‼︎ 」

大きな声を出し、夏芽がチャリを漕ぐ。
その後ろを、シンヤが懸命に押してる。


「ナツー‼︎ シンヤー‼︎ 」

丘の上から大きく両手を振った。

懐かしい友の顔は少し大人びていたけれど、
三年前と大きく変わってはいなかった。


「久しぶりっっ‼︎ 」

息を切らして夏芽が抱きつく。

「元気だった⁈ 」

背中をさすりながら聞く。

「このクソ暑い中、走って来るなんてどーかしてっぞ。お前!」

ダラダラ汗かいてるシンヤにハルが言う。

「僕は歩いて上ってたんだよ。そしたらそこへナツが来て、チャリを押してくれて言うから…」

ゼイゼイハアハア…息を切らすシンヤに夏芽が謝ってる。

三年と言う月日を皆の中に確認しながら、

私は土の中の彼に声をかけた。


(朔……皆、変わってないよ…)