「クスノキが切り倒されるんだって」

シンヤからの電話の後、夏芽(なつめ)から電話があった。

「そうらしいね」

服を着替えながら答えた。

「アレを掘り出しに行くぞ!」

ハルの言葉に胸を躍らせた。


中三の夏休み、最後の日。

私達はこの木の下にアレを埋めた。



「十年後、皆が二十五歳になったら掘り出そうぜ」

ショベルで最後の土をかけたハルが言った。

「十年後か…何してるだろう」

上目使いで夏芽は夢を描いた。

「何をしててもいいけど、皆が元気だといいな」

大きな口でニヤついてるシンヤがいた。

「私、結婚してたい!」

そう叫んだら隣にいた朔に笑われた。

「真由みたいなおてんば嫁にしたら、ダンナになる人が苦労するだろうな」

その一言に皆が笑った。


あの日からまだ、五年しか経っていない……。