(あんな夢を見たから…?)

一人、大きな楠の下に立ち、じっと地面を見ていた。

偶然と言えば偶然過ぎる。

まさか今日に限って、仲間から連絡が来るとは思わなかった…。



ピリピリピリピリ……

高音の着信音に気づいてケータイに手を伸ばした。
半ば寝ぼけたまま、誰かも確認せずに通話ボタンを押した。

「真由子?シンヤだけど」

(シンヤ…?)

寝ぼけた頭で名前を反芻した。



ガバッ‼︎

飛び起きてケータイを握り直す。

「シンヤ…て、角野晋也(かどの しんや)のシンヤ⁉︎ 」

短髪で細い目の、大きな口で笑う顔を思い描いた。

「そっ。そのシンヤ」

声と想像が重なる。

その顔は、三年前のあの夏の日以来、

ずっと遠ざけていたものだったーーー