ストレートで、素直で恋に恋してた頃の自分。
この後、こんな悲しい現実が待ってるなんて、思いもしなかった…。

手紙を封筒にしまい、手元の本を見た。
タイトルは『空に向かって』
栞代わりに挟んであった紐を頼りにページを開く。
ブルーのペンで線が引いてある部分に気づき、目で追った。


“ 奇跡がもしも起こるなら、あの空に向かって、何度でも叫びたい。

あの子をずっと守り続けていきます。

だから一生…側にいられます様に……”

あの子の部分に、薄い鉛筆文字で書かれた名前。

『真由子』


「朔っ…!」

本を抱きしめた。

…朔も私のこと、中学の頃からずっと好きだったの?!
出会ったあの瞬間から、気にかけてくれてたのかな。
私は今でもあの頃と同じ。ずっと朔のことを想ってる。
だから、もしあの頃に戻れたら…
何度でも空に向かって叫びたい。


“ 朔の側に、ずっと…ずっと…いられますように……!”



たった十七歳で、旅立ってしまった朔…。
私があなたの彼女でいた期間、たったの二ヶ月間だけだったよ。
やっと想いが通じて、念願だったファーストキスをして、
これからたくさんの時間、一緒に過ごして行けると思ったばかりだったのに…。

二度と会えなくなるような病気になって、
これが最後だと思うような瞬間があったのなら、
どうして「ごめん…」なんて言うの…。

朔はこのマウスピースを吹いてた頃と、
この本を読んでた頃と、
大して変わらない歳のままなのに…。

私だけがどんどん大人になって、
朔よりもどんどん年上になっていく…。

話したいことがどんなに増えても、
聞きたい言葉がどんなにあっても、
もう二度と、朔と会えないのなら……

せめて、
夢でもいいから、
今朝のように現れて…。

そして、私に言って欲しい。



「さよなら…」


ってーーー。