「まぁ、皆!珍しいこと…!」

手放しで喜んでくれる朔のお母さん。
会うのは三年ぶり。
一人一人と挨拶を交わし、最後に私のところへやって来た。

「真由ちゃん…ずっと待ってたわよ…」

ぎゅっと手が握られる。
その温かさに目が潤んだ。

…朔がこの世からいなくなったのを、ずっとずっと認めたくなくて、お葬式にも法事にも命日にも、お参りしなかった。
お参りしないでいれば、朔がずっと自分の側にいてくれそうで、足を…運べなかった…。



チーーーン……

鈴の音は静かに心に沁み渡る。
線香を供えて手を合わす私の向い側に、高二のままの朔がいた…。

「その写真、高二のコンクールの後で撮ったのよ。いい顔してるでしょ」

食い入るように見つめてた私の背中に向かって、朔のお母さんが教えてくれた。

「隣に真由ちゃんが写ってたわね」

中三の写真と見比べてる。

「あっという間に逝ってしまって…今でもたまに夢なんじゃないかと思う時があるの…。元気な顔して帰って来そうで、今もそこにいるようで…」

お母さんの言葉は私の思いと同じだった。
零れ落ちる涙。仏壇の前から離れられないでいる私の側に、お母さんが寄ってきた。
そ…と、優しく手を握ってくれる。


「真由ちゃんに…朔から言葉を預かってたの。聞いてくれる?」

亡くなる二日前の夜、朔の最後の言葉だったと、お母さんは話し始めたーーー。