こげ茶色の土の間から銀色のケースが見つかった。

「なんか思ってた以上に深い所へ埋めてたんだな」

シンヤがそう言って穴から出てきた。
ケースの土を払って、ロックを外す。

「真由、お前が開けろよ」

ハルの言葉に二人が頷く。
言われるがまま、ケースの蓋を開けた。

思い出の一番上に少し色褪せた写真がある。
その中に元気な頃の“ 彼 ” がいる…。

「朔……」

金色に光る楽器を小脇に抱え、得意そうに笑ってる。

私も…夏芽も…シンヤも…ハルも…

皆、誇らしそうな顔だった…。

「なっつかしーな。中三のコンクールの後に撮ったやつだよな」
「…ハル!」

元気のいいハルを夏芽が制した。

「これ…僕の入れた物だ…」

シンヤが楽譜を取り出した。

「これ、私の愛用品!」

スティック二本。夏芽が大事そうに手に取った。

「こいつはオレが入れたもんだ」

アンモナイトの化石。

「ホルン入れたくても入らねーから、代わりに化石で我慢したんだ」

呆れるように皆が笑う。
その目に映ったマウスピース。

「朔の入れた物ね…」

夏芽の言葉に取り上げた。

ギュッ…。

朔の形見。

もう二度と…手離さない。

「…これは?」

水色の封筒。宛名は私。

「それ…私が入れたの…」

十年後の自分へ宛てて書いた手紙。
文字は少し擦れているけど、きちんと読めそう。

「あと…これは?」

一冊の本。誰も覚えがない。

「皆知らねーってことは、朔のやつが入れたんだな」

「じゃあ真由の物だね…はい!」

手渡される。
ケースの中に賞状と写真が残った。

「どうする?これ」

指差してハルが言う。

「朔にやろうよ!」

シンヤの言葉に皆が賛成する。
あの日から初めて、私は朔の家に行く…。