大樹くんの両手で。
「っ!?」
「今も負けてるかも。俺は樹里に振り回されっぱなし」
「らいきくん……」
大樹くん、と言えなかった。
パッと手を離してくれる。
「あたしだって……大樹くんに翻弄されっぱなしだもん」
語尾は聞こえないように小さくした。
多分、よく耳を澄まさないと聞こえない。
「どっちもどっち。お互い様だな」
でも大樹くんには聞こえていたみたいで、フッと優しい笑みを見せてくれる。
「そうみたい……あはは」
それでも、あたしは少し負けてると思うけどね。
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