「大樹くん、嘘だよね……?」
あたしにとって、婚約者は創くんでもない、大樹くんただ1人。
なのに、大樹くんはあたしとの婚約を破棄すると言っている。
それは嘘だと言って。
「嘘じゃないよ」
短くそう言った大樹くんの顔は、少しだけ悲しそうで。
本当の言葉じゃないのかと思うほど。
嘘だ、って言ってほしかった。
「……やだ」
気がつけば、そう言葉をつぶやいていた。
「樹里?」
大樹くんに名前を呼ばれた途端、あたしは弾けるようにそこから飛び出した。
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