「あたし、この人知ってる……創くんのお父さんで、市原正也さん」 大樹くんが、あたしの言葉に頷く。 それと同時に、今まで思い出したことが流れ込んでくる。 あの小さい頃の思い出も、忘れたことも。 全て、“市原正也さん”が関係してたの? 今まで思い出しても、その名前は出てこなかった。 初めてだった、こんな風にフルネームを思い出したなんて。 「でもそれ、本当のことなの……?」 少し、信じられない。 だけど、よくよく考えてみたら……あたしは“市原”という名字に覚えがある。