「たっくんのバカー!!私より大学なの!?」
「彼女なら応援しろよ!!」
「うっ…もう知らない!!」

あの後たっくんの家飛び出して
公園で時間潰してたらたっくん探しにきてくれたんだっけ
見つけた途端「こんな時間にあぶねえだろ」って
その時有香思ったんだあ

最高の王子様に似合う最高のお姫様でいようって

「有香、それとって」
「はいたっくん」

指差された物をたっくんに渡して、たっくんの手によって段ボールに詰められ、いよいよ引越しの準備は終わった。
すっかり寂しくなった部屋を見渡してすこしだけ、寂しくなったり、泣きそうになったり。…でも泣かない。笑って送りだすのがイイ女

「たっくん、これプレゼント」
「…なん?」
「お守り、お勉強が上手くいきますようにーって」
「おお、……さんきゅ」

きゅんっ
有香はたっくんのそのくしゃって笑う顔、だいすき
どんなに気分が沈んでたって、その笑顔見たらどうでもよくなっちゃう

「うん、……ほんとうに、お勉強、がんばってね」
「おう、……そういやさ、俺があの大学行く理由、言って無かったよな…」

ん?と顔を上げれば恥ずかしそうにはにかむたっくん。
そういえば、お医者さんになるための大学だとは知ってたけど、どうしてお医者さんになりたいかは聞いた事なかった…。思わず正座してたっくんを見つめる

「うちのばーちゃん癌で死んでるんだわ。…単純だけどそれで。俺ばあちゃんっ子だったし、一人でもばーちゃんみたいに苦しみながら死んでいく人が減ればいいなーって…」
「……あ、そうなんだ…」

びっくり、それからほっこり。
たっくん優しいね、本当に優しい。なのに有香は、子供みたいに…

「う、うう~っ……」
「なんで泣くんだよ!!??」
「だって、だぁってたっくんやさし…からぁ…」
「ったく、おめーは…」

あれ、泣いちゃった。
……でもたっくん笑ってるから、いいや