そんな射殺しかねない視線に恐れ戦いたアレックス。自分の発言は棚にあげ、ジェラルドの耳元で騒ぎ出す。



「ほら、ジル謝って!
『浮気して悪かった。やっぱり、おまえが一番だよ』って……」

「ふざけんなー! それじゃ、俺がカインとデキてるみたいだろー!」



 時折、アレックスはどちらの味方かわからない。すぐ状況をその場の勢いで、自分の面白い方へ持って行くのだ。
 実害がない場合はいいが、今回はジェラルドにやましいことがあるだけにたまったものではない。

 その直後、カインの瞳が獲物を狙う鷹のごとく鋭く光った。


「なら、ハーベスト卿。
 このぼんくら元騎士団長が、昨晩にどこで誰と会っていたかわかりますか」

 アレックスは、こっくりと頷く。

「うん。わかるよ」

「!?」


 裏切者の出現により、あっという間に二十人ほどの人名を書き連ねた名簿が完成した。