婚約者の憂鬱





「あの時か」

「今頃、気づいたんですか」


 カインが鈍いとばかりに半眼で見つめてくる。


 そこへ、同僚の騎士に縄を外してもらったらしいアレックスが駆け寄ってきた。



「ジルー、カインー。お腹すいたー。早く帰ろー」






 アレックス・ディール・ハーベスト。

 結婚した後のジェラルドの日記には、彼の名前が頻出する。

 女王の夫として、大公として、悩みが尽きないジェラルドにとって、かけがえのない友人だったことが窺える。

 しかし、アレックスについての詳細な記録はほとんどない。
 彼がどんな人柄だったのか、後生の歴史家たちは頭を悩ませている。