慌てて涙を拭い、何事もなかったかのように平静を装い、『はぁい』と返事した。




ガラガラと、ドアが開けられる。




まさか、友達が学校を抜けて、わざわざ来てくれたのかな?




…ううん、違った。




ドアの先に見えたのは、知らない顔の中年のオッサン。




どうやら、病室を間違えたらしく、私に一言謝ると、出て行った。




花束を持っていたから、誰かのお見舞いかな?




多分、妻かなんかが、この病院に入院してて、そのお見舞いかもしれない。




なんでかって?




さっきのオッサンが持っていたのは、小さなピンクの胡蝶蘭の花束だった。