「でもさ、会ってないってことはそれはそれでチャンスかもよ?」


「チャンスって?」



由利の突然の一言に、私はすぐさま我に返った。



「ほら、女の成長は男より早いって言うじゃない。3年もあれば少女は大人に変わる。あの時確かに西嶋さんにとって白雪は“妹”だったかもしれない。けど、それは3年前までの話でしょう?」



少女は、大人へと変わる……か。


だとしたら。もし、本当にそうだとしたら。


今会えば、太一兄ちゃんは私のこと1人の“女の子”としてみてくれるのかな?



「ねえ由利。私、3年前と比べてどこか大人っぽくなったかな……」


「それは」



それは?


真剣な由利の眼差しを前にし、柔らかな期待を抱いてゴクリと唾を呑み込んだ。



「……わかんないけど」



ちょ、わからんのかい!


一気に力が抜け、ガクッと肩は斜めに傾いた。



「とにかく、そんな小さい時のことで諦める必要はないと思うよ私は」



そ、それもそうかもしれないけど……。



「太一兄ちゃんのことはもういいの。遠くに行っちゃって会えないんだし。……それより、これから高校で、とっても素敵な人見つけるんだから!」



私は切り替えるようにそう言うと、握り拳を由利に向けた。



「ん、わかった。応援してるわね」


「ありがとう」


「じゃあ、また学校で」



私達は一瞬立ち止まり、互いに手を振る。そして、各々の道に別れた。


春の陽気を告げる小鳥の囀りが、遠くの方で響いた──。