──……



『ねぇ、白雪』



教室に着き、教科書をカバンから取り出して整理をしている時だった。


ドン、と私の前の席に後ろ向きに腰を下ろした由利は、すぐ目前でニコリと笑みを見せた。



『今週の土曜って空いてる?』


『うん、空いてるけど』


『良かった!』



両手を組み、嬉しそうな声を上げたかと思うと、彼女はとあることを切り出し始めた。



『場所は水族館なんだけど……』


『だけど?』


『私達の他に、男子2人も一緒なのよねー』


『え? だ、誰。もしかして……』


『そう、1人は大悟よ。なんかあいつ、昨日急に“今フリーの女の子1人誘ってくれー”って言ってきてさ』



“大悟”とは、由利が中学3年生になってから付き合い始めた彼氏のことで、フルネームは近江大悟(おうみ だいご)。因みに、中学時代はサッカー部のキャプテンをつとめるくらい、運動神経抜群な男の子だ。