美波に振り向いてもらおうと必死なのに何かが違ってよく空回りしている。
そのことを男子に小突かれてへこたれている彼が、面白い。

「ひどいなあ、透。」

突然わたしの頭上から降ってきた声。
「げ!颯斗!!」
西宮くんが叫び、美波が息を呑む。
わたしは嫌な予感に血の気が引いた。
「俺の顔そんなに嫌?」
面白そうに喋る人を誰か確認する勇気がない。
上を向いたら負けな気がする。
「ばか!冗談だよ、そんなの!」
笑いながら撤回する西宮くんの声が聞こえた時にはぽんと肩に手が乗った。

やめろやめろやめろ。

美波の驚く顔が目の前に見える。
「で、花浜さーん?まあまあってなに?」
そこから聞いてたのか!!!
「…うう」
「おい、陽菜。」
「もう!!」
威圧したような声に手をはらいのけて後ろを向きながら立ち上がる。
背が高いそいつを見上げなければならないのはひどく癪だ。
昔はわたしの方が高かったのに!