愛してると囁いて【短編】

女の子を笑顔で見送っていると、目の前にある一人の女学生が通りすぎた。


清潔感たっぷりのさらさらショートヘアが寒風でなびく。と、同時に彼女がくしゃみをした。

女の子らしい小さなくしゃみだ。


俺は、いつも通りに彼女、水嶋歌音(ミズシマカノン)に近づいた。

寒いのか、身を縮めている姿がかわいらしい。


俺は音もなく、歌音の傍に寄る。

名前のとおり、音楽に関することが好きみたいで、俺には理解不能の楽譜をいつも大事そうに持ち歩いている。


やっぱり名前のとおり、歌を習っているらしく、楽譜は読めないけど英語みたいな歌詞が見えた。

歌をやってるくせに合唱部じゃなくて吹奏楽部っていうのがまた不思議。


俺はこいつの意味不明な行動が面白くて、よくちょっかいをだしていた。



歌音は天然なのか、馬鹿なのか、真面目なのか、はよく知らないが、俺を軽くあしらわず、ちゃんと構ってくれる。


飽きないんだよなぁ、こいつ。