愛してると囁いて【短編】

唇を離すと歌音の口から甘い吐息が漏れ、顔を真っ赤にして俯いた。





















…………て、

何してんだ俺?!



どうやら俺は理性がぶっ飛び、歌音…にやっちまったらしい。


俺は今更恥ずかしくなって歌音の腕を放した。



歌音の温もりを手放して、

急に歌音の腕を握っていた掌が寒く感じた。




この気まずい状況から早く逃げ出したい。

視線を宙へ泳がせていたが、やっぱり俺ヘタレなのかもしれない。

耐え切れなくて、歌音へ背中を向けた。



「―――っ…ごめん!じゃあな!」



俺は無理矢理笑顔をつくってその場を退散しようと、逃げるように去ろうとした。

が、


















「待って!!」



ついさっき、俺がこいつのファーストキスを奪ったというのになんだ?

俺が怖くないのかよ?


歌音は走って俺を追いかけてくる。

それを視界に入れてしまった俺は足をとめた。




「あ、あのね、かつ君……」


「………な、んだよ」


「さっきの問題…覚えてるよね?」


「………うん」




答えなんか、聞きたくねぇ。

また、胸がギューってなって苦しくなる。


さっきからなんなんだ?おれの胸は…

マジで癌か?

なら末期なのかも。

なんかすげぇ苦しいし。



ぼんやりとそんなことを考える。




「あのね…答え何だけど…」


「言うな」


「…え?」


「…聞きたくない…っ」





俺はまた走りだした。