「春からこちらの方に越してきたんですけど 環境とかどうもうまくいかなくって すぐ体調崩しちゃうんですよね」 「大変だね」 彩花さんとは反対方向から落ち着いた低い声がきこえた 男の人は苦手だ 何を考えているのかわからない 「いいんです。生きていれば、それで」 そっぽを向くように言い捨てた 「なんかかっこいいね」 はじめて誰かに認められた気がして 嬉しかったんだ。 照れくさくてそのあとに出てくる言葉はなかった。