(……そういえば、昔、本で読んだわ)


シンデレラは、随分昔に、義姉たちが黄色い声をあげながら騒いでいた恋愛小説を、彼女たちが出掛けている間に盗み読んだことを思い出す。


その時は、恋なんて自分には無縁の話だと思い、すぐ読むことをやめてしまったのだが、読んだ時にひとつだけ印象に残っていることがあった。


「……ね、ねえ」


突然立ち止まったシンデレラを不思議に思いながら、魔法使いは少し首を傾げて振り返る。