わたしの想いがとどくように

弥生はバイト先に行くと、裏口から元気良く入った。店長が開いたこのカフェは、カップルと女性に人気がある。弥生がバイトしたいと着たのは、高校1年の秋だった。店長はなにか察したのかもしれない。いいよと言ってくれた。店長には、幸奈のことを話した。店長は、結婚はしていないが、左手の薬指に指輪をしていた。ここは落ち着いた。バイトはいつも落ち着く場所だった。楽しくて大好きだった。

「こんにちは!」

明るくそういうと、見知らぬ顔と目が合う。

「こんにちは」

男の子だった。かっこいい顔をしている。
暁な少し近い顔だが、暁は少し女っぽい顔だ。茶髪はきっと染めているはずだ。

「…店長!新人さんですか?」

弥生は店長に向かって話しかけた。

「そうだよ」

弥生はそれを聞いて男の子にいった。

「初めまして!わたし、相模弥生、高2です!よろしくね」

「俺は森下航大、同じ高2です」

「こうだい?わたしの従兄弟と同じ!」

「へー、偶然!」

「凄いよね、じゃあ頑張ろ!」

弥生はそういうと、更衣室に入った。
制服はシャツが黄色で、スカートは黒で腰に黒いエプロンをする。タイも短くて可愛い。弥生は着替えると、ツインテールにして、髪の毛でゴムを隠した。鏡を見ると、少し情けない顔をしている。弥生は頬を叩いた。そしてにっこり笑ってみせる。よしっとすると、弥生はお店に出た。
少しウェイトレスをやり、航大のフォローをしていた。少し客が少なくなると、弥生は店長に呼ばれた。

「弥生、店先の掃除してくれる?」

「はい」

弥生は掃除道具を持ち、外に出た。半袖は肌寒いが、今日は良い天気で桜の花びらが待っている。一通りはきおわり、少し伸びをすると、弥生は綺麗に咲いている華がついている枝が落ちているのに気がついた。

「うわー、店長に渡してあげるからね」

「弥生!」

幸奈の声が聞こえた。何故ここで…?と思ったが、振り返ると美華子と歩いている幸奈が弥生の後ろに立っていた。弥生は驚いて立ち上がろうとした瞬間、幸奈が肩を支えてくれた。一瞬幸奈が自分と買ったネックレスをしているのに気がついた。いろいろな感情がわいた。悲しくて悔しくて切なくて…顔に出てしまった。弥生はドキッとしたが、みられていない。幸いなことだ。ぱっとそのままターンして2人に笑顔を向けた。

「ありがとう、幸奈」

「別に」

美華子は少し気まずそうにしていたのだが、弥生は笑った。

「あ!噂のお二人でデート?」

「そうだ」

「美華子は浮かない顔をしてるなぁ」

弥生は美華子の両頬を軽く抓った。美華子は弥生が笑いかけるとにっこり笑った。

「弥生…」

「あのね、2人とも!なんで言ってくれないわけ?暁もわたしもご立腹だよ!付き合うことになったって一言言えばいいじゃない!」

「ごめんなさい」

美華子がいう。

「いいよ。そんなに怒ってるわけじゃないもん。でも!幸奈は酷い!わたしの美華子をとるなんて!!」

弥生は泣きまねをしてみせた。

「誰の美華子だよ」

「えー?」

「弥生、バイトしてたんだね」

「うん、社会勉強に」

「髪も制服も可愛い!」

「ありがとう」

弥生は明るくそういう。

「我校1の美男美女カップルかぁ、いいなぁ」

弥生はそういうと、掃除道具を持った。そして、ドアを開けた。そして、礼儀正しく礼をした。

「いらっしゃいませ」

「ありがとな」

幸奈がそういうと、美華子の手を引いてお店に入った。弥生もお店に入る。2人が楽しそうな話しているのをみた。航大が接客している。弥生は掃除道具を片付け、桜を店長に持って行く。

「店長、この桜後で生けてください」

「綺麗だね、桜の花びらもあるといいな」

弥生は渡すと、すぐに花びらを取りに行った。散っている花びらをとりにいった。弥生はビニールを風に仰がせた。店長のほうは、航大からの注文を作ってから、すぐに桜を生けた。弥生はビニールで集めた新鮮な桜を店長に渡した。水面に桜の花びらが散る。

「弥生の友達のところに置いてきなさい」

「はい!」

弥生は笑うと、2人の座っている席に持っていった。このお店には、華が沢山ある。
四季折々の華、人気の一つだ。
だが、店長は多才で料理もお菓子も絶品だ。弥生はコーヒーの淹れ方と、お菓子の作り方を習った。
弥生は2人が話しているところにいった。