わたしの想いがとどくように




夜、幸奈は夢をみた。いつも夢を見ると変わらない。
自分は水深の深い水の上にいて、皆が落ちるのを見ている。
そして、自分の前には高い壁がある。
誰も助けてくれない。いつも上には白い綺麗な羽の天使がいた。誰だろう?
いつも羨ましいと思って見ているけど、自分は動けなかった。
あの子に近づきたくて、もがくのに、いつも苦しくてどうにもならない。

「起きてください!幸奈さま、起きてください」

父の秘書の1人に起こされる。周りには5人くらいの遣いがいる。
起き上がると、すぐに着替える。毎日変わらない。つまらない毎日だ。

「今日も美華子さまと学校へ?」

「ああ、車で迎えに行く」

「かしこまりました」

そういうと、部屋にいた全員が出ていった。幸奈は溜め息をついた。
いつも、誰かに干渉されているのは疲れる。
学ランに着替えると、食堂に行く。祖母と祖父と姉だけだ。
「おはようございます」

「おはよう」

祖父がそう言った。椅子に座ると、食事を出され、すぐに食べる。
ここにいるのは凄く疲れる。いつだって、祖父が考えているのは、会社のことだけだ。
勉強も、運動も、出来て当たり前、それ以上を望まれる。
頑張っていても、それが当たり前になっていて、誰も自分を見たりしない。
それに少しずつ慣れて、今にいたっている。
感情なんか完全に捨てたい。表しても誰も見てくれないのだから。
黙々と食事をして、食べ終わると、席を立つ。

「私も行くわ」

幸乃がそう言って、立ち上がった。幸奈と2人で外に出る。
姉も多分空気が思いと感じたのだろう。今日は祖父が不機嫌だったからだ。

「お祖父さま、何かあったのかしら?」

「交渉がてこずってるんだ」

「へー、なんで幸奈が知ってるのよ」

「秘書の人が話してるの聞いた」

靴を履き替えると、沙也が来た。

「幸奈くん!お弁当!」

「はい」

沙也から受け取る。今日は1つかと安心する。幸乃も珍しそうに見ていた。

「今日は2人とも忘れなかったのね」

「はい、今日はって、結構減ってるんですよ!」

沙也は少し意地っ張りにそう言う。

「そうなの?」

「はい」

「ふーん、じゃあ無くならないとな」

幸奈はそう言うと、ドアを空ける。車が目の前に2台準備されていた。

「幸奈、早く行かないと!」

「あぁ」

幸奈は乗り込むと、すぐに車が発車する。外の景色はどれも同じように見える。
住宅街の1つに美華子の家がある。
5分とかからずに着くので、学校に行く時間は変わらない。
弥生はいつも気を使ってくれ、2人にしてくれることが嬉しかった。
美華子の家の前に着くと、美華子は外で待っていた。