わたしの想いがとどくように

「今日はありがとうございました!」

弥生はそう言うと、深くお辞儀をした。そして続ける。

「私、しっかり好きを通します。店長がしてるみたいに」

「そう、弥生なら大丈夫」

「はい!お話し本当に聞けて良かったです。嬉しかった。」

「良かった、弥生にはいつか話したかったからな」

店長はドアに寄り掛かってそう言った。
弥生の携帯が鳴る。鞄から取り出すと、幸奈からだった。
弥生はごめんなさいと言って出る。

「もしもし」

『弥生、まだバイトか?』

「うん、でももう帰るよ」

『皆待ってるぞ』

「はーい」

弥生はそう返事をする。携帯を切ると、店長は弥生の携帯を見ていた。

「なんですか?」

「いや、なんでもない。じゃあ、またな」

ストラップを見ていた。弥生は少し気になった。どれも母が作ったものだ。

「「さようなら」」

2人はそういうと、裏口から出て行った。航大は、少し感動していた。

「店長って、やっぱかっこいいな。クールな感じで、なんでも出来てさ。それであんなに一途で」

「そうだね、かっこいい」

弥生は考えていた。握ったままの携帯を見た。
ストラップは、母のデザインしたものだ。
弥生の母はアクセサリーなどのデザイナーだ。
母と店長は繋がりがあるのか?そういえば名前は行ってくれなかった。

「俺もあんな風になりたいな」

航大がボヤきを、弥生は笑顔で返した。

「努力をすればなれるよ」

「だといいな」

「航大くんは、なんでなりたいの?」

「俺も好きな人いるから」

「どんな子?」

「いつも花の世話ばっかやってる子」

「じゃあ、面倒見の良い子だ」

「確かに、でもお前と同じ状況だよ。彼氏いるんだ」

「そっか」

「俺、見た目が軽そうだから、あいつにとっては友達ってだけなんだよ」

「見た目は関係ないよ」

「そうか?」

「航大くん、中身凄く良いじゃない。芯を持っていて、人を客観的に見てる人、私は好きだよ」

「お前はどんなやつもいいとこ見つけるよな」

「えっ?」

「気付いてないの?」

「わからないよ、だって自分がそう見えることをいうだけだもの」

「ふーん」

「女の子、あってみたいな。きっと素敵な子だよね」

「そうだな」

弥生は笑った。無理を感じない。髪を切ってすっきりした顔になった。

「お前、髪きってすっきりしたな。前より良い顔してる」

「本当?嬉しい!」

髪の長さ頑張って延ばしていた。
幸奈が長い髪が好きだからと頑張ったけど、美華子には及ばなかった。
なにか見えないものにいつも縛られていた。だから、すっきりした。

「つーかさ、なんでお前の名前は"弥生"なの?」

素朴な疑問だ。

「私のお祖母さまが3月生まれなの。お祖父さまが、つけたのよ。
お祖母さまみたいな人になってほしいって」

「ふーん、名前からもじるとかしないのかよ」

「でも、私自分の名前が好きよ」

弥生が言うと、航大はふーんといった。
弥生は好きをはっきり言う。小気味良かった。