わたしの想いがとどくように


バイトにつくと、弥生はすぐに着替える。
今日は、咲さんが一緒だ。髪をゆってもらう。

「弥生ちゃんの髪の毛は、いつも綺麗ね。なにかしてる?」

弥生は髪をとかされて、まとめられる。
幸奈が髪の長いほうが好きと聞いていたので、延ばしていた。
しかし、美華子は自分よりも長く、腰くらいまである。

「とくには」

「そうなの?いいね、生まれつき」

「そうですかね?」

「うん」

咲は、緩いダンゴを作った。弥生は鏡を見て納得する。
お店に出ると、常連の人にもおめでとうと言われた。
弥生は自分の周りは充実していると感じた。

「こんにちは」

航大が来たのは午後5時だった。部活があったらしい。
すぐに着替えるが、今日は店長は6時半まででお店を閉じてしまう。
弥生の誕生日だから、ゆっくり祝ってくれるらしい。

「弥生、誕生日だったのかよ!早く言えよな」

航大は呼び捨てをしている。
ゴールデンウィークに、2人はバイトをずっと入れていたので、そこでだいぶ仲良くなった。
お昼によく話した。趣味や好きなことがだいぶかぶっていた。
仕事をしていると、すぐに6時半をまわっていた。店長はお店を閉める。

「今日は、弥生の誕生日ゆっくり祝ってやるからな」

幸奈は店長のその言葉にびっくりしていた。航大のときもそうしてくれた。

「お前いえよ!」

「えー!私はちゃんと前から6月7日が誕生日だっていってたじゃない!」

「日付忘れてたし…悪かった!おめでとう」

「ありがとう」

弥生は笑った。3人で着替えてから、またお店に戻る。
店長はケーキを作ってくれたらしい。弥生の好きなストロベリーのチーズケーキだった。
店長が最初に弥生に食べさせてくれた時に、弥生はそれが大好きになった。
弥生と航大と咲は、カウンターに並んでいた。店長は3人にケーキを渡す。
弥生に弥生は出されたときに幸せな顔をしていた。

「ありがとうございます!!」

「食べなさい」

そう言われて、弥生はホォークで一口すくい、口に運ぶ。
一口で頬が落ちそうなくらいの味わいが広がる。弥生は顔を綻ばせた。

「うわ、幸せそうに食べんな!」

「だって美味しいよ!航大くんだって食べてるじゃん!」
航大はもう半分は食べていた。航大は美味しいものはすぐに平らげる。

「弥生、欲しいものはないのか?」

店長が聞くと、弥生は少し考えてからはっと思い付いた顔をした。 

「あの、ブレスレット預かって欲しいのと、髪を切って頂きたいです」

弥生は幸奈からのプレゼントであるブレスレットを自分の鞄から取りに行き、店長に渡した。

「これは、お前が好きな人から貰ったんだろう?」

「幸奈には、彼女がいます。見たでしょう?可愛くて綺麗な柔らかい女の子。
わたしの大切な友達。わたしがこんなの貰っては駄目なんです。
幸奈になんの気持ちもなくても、わたしにはある。それでは駄目。
それに、これを見ると私は辛くなるんです。わたしの気持ちがあふれそうで…」

店長はそれを聞くと、納得したようにブレスレットを受け取った。